時は満ちた。1月5日、ようやくハンピを出る列車のチケットを手に入れた俺たちは、まだ家中の誰もが寝てるような時間にリキシャをつかまえてホスペットの駅へと向った
まだ人の息の混じっていない清潔な朝の空気のなか、俺たちを乗せたリキシャは街頭どころか車のテールランプすら見当たらない道路をただひたすらと駅へと走らせた
駅は相変わらずロータリーにもホームにも構内のロビーにも布を引いて夜を明かしているインド人が転がっている
俺たちは駅の掲示板で自分達の列車や発着ホームを確認すると、まだ時間は一時間ほど余っていたが、そのまま自分達のホームに向った。朝の明るみが果てしない当方からにじむように広がり、ホームの間にゆっくりと光を落としていく。長い長い移動が始ったのだ
俺たちはここから一気に南インドの南西に位置するコーチンにゴアを経由して向う手筈となっていた。ゴアでテクノパーティーに参加して朝まで踊り明かしたいって話もしてたんだけど、この時期はとに角宿代が高いという話を他のツーリストから聞いていたので、その計画はドイツまで持ち越して、今回はパスする事にしていた
列車は朝の6時発で夕方の4時にゴアに到着、そこから2時間のトランジットの後、夕方の6時発の列車に乗り次の日の朝にコーチンに到着する、約24時間前後の移動
ゴアまでの列車の旅はあっという間だった。俺はPCで映画みたり音楽聴いたり、ベノは本をよんでポールは景色をぼーっと眺めて、皆それぞれしたい事をして特に会話もせずに、邪魔をしてくるインド人もいなく、午後は淀んだ深い川のようにゆっくり静かに流れていった
ゴアについてからはリキシャに乗って一度街に出てから夜に備えてレストランで夕食をとって再び駅まで戻った。ここでもベノの事で揉めたんだけど、長くなるので割愛!!
2本目の電車はナイトトレインとなるので、寝台席を取ったんだけど、今回は3Aじゃなくて普通のスリーパー席
問題はここからで、最初は3人の席は同じボックス席の中という話だったんだけど、席は近いものの皆バラバラ。そして一人分の席だけボックスから外れたサイドシート。何が問題かというとこのサイドシートは他のシートに比べると少し短いのだ。当然のことながらポールの足は納まらないし、身長が185あるベノもにも少し窮屈。そして俺ならギリギリ納まる。
しかしである、最近パックセーフをなくして以来、俺は防犯も兼ねてバックパックをベッドの上に載せて枕にして一緒に寝るようにしていたのだ。そうするとバックパックの分のスペースがあるので俺でも体がおさまらなくなるのだ。そうなると一体誰がババを引くのかという問題になってくる
体が長すぎるポールは当然のように一番上のアップシートに寝そべり知らん顔。残った俺とベノでバトルとなったのだ
最初は当然のように短いシートがあてがわれたが、バックパックの事を説明した
するとベノは「バックパックを下に置けば問題ないだろう?」「いや、大事なものがいろいろと入ってるから下には置きたくないんだ」
ベノ「誰も盗んだりしないよ」「ここはインドだぞ!!まだろくに旅もしたことないくせに良くそんな無責任な事が言えるな??もし何か盗まれたらお前が責任とってくれるのか??」と、俺はすこし興奮気味で言い返した
ベノ「鍵をかけとけば大丈夫だよ」「そんな事聞いてない!!質問に答えろ!お前の言うとおりにして何か盗まれたら責任とるのか聞いてるんだよ!!」
すると知らん顔していたポールが上から「ベノ、彼の言うとおりだ。おれ達にそんな責任取れるはず無いだろ。人の荷物の管理のし方にまで口を出すべきじゃない」 ベノ「じゃあ誰があそこで寝るんだよ」
上でのん気な顔をしてるポールも引き摺り下ろしてやりたかったが、さすがにポールをあそこに押し込んだら、体育座りで寝る羽目になるので、結局俺とベノの言い争いにならざるをえなかった
それに何よりムカつくのが、ベノの物言い。回りくどくて理屈っぽすぎるのだ。ストレートにシンプルに言えばいいのをあーでもないこーでもないと関係ない話まで織り交ぜて言って来るので、次第に背中を走っている神経の束を逆撫でされたようにイライラしてくる
その上2人とも下手くそな英語で言い合いをしていたので、お互い段々言ってる事がわからなくなってきて、バトルは苛烈を極めていった。ベノはたまにドイツ語になるし
俺が切れて「じゃあ勝手にしろよ、そんなにそこで寝たいならどうぞゆっくりといい夢でも見てくたばっちまいな!!お休み!!」と言って、短いシートの方に荷物を移し出すとベノが「そんなに熱くなるなよ」・・・誰が熱くさせてるんだ?
自分の物言いが人をイライラさせることに全く気づいてない様子のベノ君
更にベノは「そんなに怒るなよ、わかったよ。俺がそっちで寝てみるよ。寝てみれば意外と寝心地が悪くないかもしれないし」と、急に大人になるベノ
恐らく彼に最初から悪気は無かったのだ。ただあまりにも回りくどい言い方に俺が勝手にいらいらしてバトルになってしまったのだ
俺は別にじゃんけんとかで決めてくれても良かったのに。ドイツにもちゃんとじゃんけんの文化があるのだから。ちなみにドイツでは「シュニック シュナック ニュノッグ」と、言うらしい
それでもこのイライラした気持ちで仲直りする気にもなれなく、空気の悪いままベノが短いベッドをとり、ようやく全員とこにつくことができた。周りをみると他の白人ツーリストがドン引きの顔でこっちを見ていた
インド人が外で怒鳴りあいをしているのは日常の光景だろうけど、日本人とドイツ人が下手くそな英語で喧嘩してるのはきっと彼等には始めての光景だったに違いない
しかし、ごたごたはこれだけでは終わらなかった
真っ黒なインクをぶちまけたような夜更けに、ベノがいきなり俺を叩き起こしてきた。
まだ昨日の事を根に持っているのか?なんて奴だと思っていると、俺に列車のチケットを出すように言ってきた
「なんでそんなものこんなクソ遅い時間に必要なんだよ、チケットのチェックならとっくにおわってるだろ?なんか俺に恨みでもあんのかベノ?」 「俺のベットの前にいるインド人を見ろ。あいつが自分の席だって言い張るから今揉めてんだよ、それでチケットが必要なんだ」
確かにベノのベッドの前には恰幅のいいインド人が携帯電話で誰かと話しながら立ちはだかっている
素直にチケットを出してベノに渡すと、ベノはチケットを持って自分の席に戻って、電話で話しているインド人に強い口調で主張を始めた
「これが俺のチケットだ。よくみろ!!次はお前の番だ!!お前言ったよな?チケット持ってるって!見せてみろよ」 インド人「あー悪かった 俺の勘違いだ ここはお前の席でOKだ」
ベノ「良くない!!お前チケットもってるって言っただろう?見せてみろよ。こんな時間に人たたき起こして間違いでしたで済むと思ってるのか?とに角お前のチケットを み・せ・ろ」ベノにしては珍しく熱くなっている(ベノは見かけによらず平和主義者です)
インド人はたじたじで「悪かったって言ってるだろう?」ベノ「意味わかんないね!!いいからチケット出せよ」と攻めまくるベノをポールも目を覚ましたのか心配そうに眺めていた
インド人はベノの攻撃にずるずると後ずさりして、逃げるように携帯電話で話しながらどっかに消えてしまった
その後も怒りが治まらないのか、一人でぶつぶつと怒りを独り言に載せて、ラップのようにつぶやいていた
さ・ら・に その数時間後の朝、今度は俺の下で寝ていたこれまた恰幅のいいインド人に叩き起こされた
奴の主張は今すぐ起きて上の空いてるベットに移れというものだった
インド列車のボックス席は、ベッドが3段になっていて、普段は2段目のベッドは畳まれている。そうしないと一番下の席に座ることができないからだ。だから彼は起きて座りたかったから、寝ている俺を起こして上に移れと言ってきたのだ
朝はだれだって機嫌が悪い。例外なく俺も昨日の事も手伝って格別にこの日の朝は機嫌が悪かった
そのインド人に対して俺は一言「い・や・だ」と、言って寝返りをうってそっぽを向き、もうこれ以上お前と話す気はないと言う態度を示した
するとそのインド人は、そんなのおかまいなしに、ぎゃーぎゃーわめき始めた。さも自分の主張が当たり前かのように。頼み方を知っていれば俺も嫌々ながら上のベッドに移ったのに、こいつの態度はいただけない
しつこいので俺は無言で思いっきり上のベッドを蹴っ飛ばした。すると騒いでいたインド人は急に大人しくなり、風船がしぼんでいくように自分の席に戻っていった。でかいのは体だけで気はちっちゃいのがインド人の特徴。それを良く知っている俺は場を簡単におさめる方法を知っていた
しかし、自分が馬鹿だった事にすぐ気がつかされた。ベッドを蹴った衝撃で親指のつめが中ほどまで割れて、血が滲み出ていた。昨日ドン引きしていた白人ツーリストはまたかと言った顔で今度は呆れ顔
電車を降りるとき俺はポールに「もう二度とこの3人で電車に乗りたくない」とい言った「そんな事言うなよ、俺は楽しかったぜ」 俺「お前だけな!!」
まだ人の息の混じっていない清潔な朝の空気のなか、俺たちを乗せたリキシャは街頭どころか車のテールランプすら見当たらない道路をただひたすらと駅へと走らせた
駅は相変わらずロータリーにもホームにも構内のロビーにも布を引いて夜を明かしているインド人が転がっている
俺たちは駅の掲示板で自分達の列車や発着ホームを確認すると、まだ時間は一時間ほど余っていたが、そのまま自分達のホームに向った。朝の明るみが果てしない当方からにじむように広がり、ホームの間にゆっくりと光を落としていく。長い長い移動が始ったのだ
俺たちはここから一気に南インドの南西に位置するコーチンにゴアを経由して向う手筈となっていた。ゴアでテクノパーティーに参加して朝まで踊り明かしたいって話もしてたんだけど、この時期はとに角宿代が高いという話を他のツーリストから聞いていたので、その計画はドイツまで持ち越して、今回はパスする事にしていた
列車は朝の6時発で夕方の4時にゴアに到着、そこから2時間のトランジットの後、夕方の6時発の列車に乗り次の日の朝にコーチンに到着する、約24時間前後の移動
ゴアまでの列車の旅はあっという間だった。俺はPCで映画みたり音楽聴いたり、ベノは本をよんでポールは景色をぼーっと眺めて、皆それぞれしたい事をして特に会話もせずに、邪魔をしてくるインド人もいなく、午後は淀んだ深い川のようにゆっくり静かに流れていった
ゴアについてからはリキシャに乗って一度街に出てから夜に備えてレストランで夕食をとって再び駅まで戻った。ここでもベノの事で揉めたんだけど、長くなるので割愛!!
2本目の電車はナイトトレインとなるので、寝台席を取ったんだけど、今回は3Aじゃなくて普通のスリーパー席
問題はここからで、最初は3人の席は同じボックス席の中という話だったんだけど、席は近いものの皆バラバラ。そして一人分の席だけボックスから外れたサイドシート。何が問題かというとこのサイドシートは他のシートに比べると少し短いのだ。当然のことながらポールの足は納まらないし、身長が185あるベノもにも少し窮屈。そして俺ならギリギリ納まる。
しかしである、最近パックセーフをなくして以来、俺は防犯も兼ねてバックパックをベッドの上に載せて枕にして一緒に寝るようにしていたのだ。そうするとバックパックの分のスペースがあるので俺でも体がおさまらなくなるのだ。そうなると一体誰がババを引くのかという問題になってくる
体が長すぎるポールは当然のように一番上のアップシートに寝そべり知らん顔。残った俺とベノでバトルとなったのだ
最初は当然のように短いシートがあてがわれたが、バックパックの事を説明した
するとベノは「バックパックを下に置けば問題ないだろう?」「いや、大事なものがいろいろと入ってるから下には置きたくないんだ」
ベノ「誰も盗んだりしないよ」「ここはインドだぞ!!まだろくに旅もしたことないくせに良くそんな無責任な事が言えるな??もし何か盗まれたらお前が責任とってくれるのか??」と、俺はすこし興奮気味で言い返した
ベノ「鍵をかけとけば大丈夫だよ」「そんな事聞いてない!!質問に答えろ!お前の言うとおりにして何か盗まれたら責任とるのか聞いてるんだよ!!」
すると知らん顔していたポールが上から「ベノ、彼の言うとおりだ。おれ達にそんな責任取れるはず無いだろ。人の荷物の管理のし方にまで口を出すべきじゃない」 ベノ「じゃあ誰があそこで寝るんだよ」
上でのん気な顔をしてるポールも引き摺り下ろしてやりたかったが、さすがにポールをあそこに押し込んだら、体育座りで寝る羽目になるので、結局俺とベノの言い争いにならざるをえなかった
それに何よりムカつくのが、ベノの物言い。回りくどくて理屈っぽすぎるのだ。ストレートにシンプルに言えばいいのをあーでもないこーでもないと関係ない話まで織り交ぜて言って来るので、次第に背中を走っている神経の束を逆撫でされたようにイライラしてくる
その上2人とも下手くそな英語で言い合いをしていたので、お互い段々言ってる事がわからなくなってきて、バトルは苛烈を極めていった。ベノはたまにドイツ語になるし
俺が切れて「じゃあ勝手にしろよ、そんなにそこで寝たいならどうぞゆっくりといい夢でも見てくたばっちまいな!!お休み!!」と言って、短いシートの方に荷物を移し出すとベノが「そんなに熱くなるなよ」・・・誰が熱くさせてるんだ?
自分の物言いが人をイライラさせることに全く気づいてない様子のベノ君
更にベノは「そんなに怒るなよ、わかったよ。俺がそっちで寝てみるよ。寝てみれば意外と寝心地が悪くないかもしれないし」と、急に大人になるベノ
恐らく彼に最初から悪気は無かったのだ。ただあまりにも回りくどい言い方に俺が勝手にいらいらしてバトルになってしまったのだ
俺は別にじゃんけんとかで決めてくれても良かったのに。ドイツにもちゃんとじゃんけんの文化があるのだから。ちなみにドイツでは「シュニック シュナック ニュノッグ」と、言うらしい
それでもこのイライラした気持ちで仲直りする気にもなれなく、空気の悪いままベノが短いベッドをとり、ようやく全員とこにつくことができた。周りをみると他の白人ツーリストがドン引きの顔でこっちを見ていた
インド人が外で怒鳴りあいをしているのは日常の光景だろうけど、日本人とドイツ人が下手くそな英語で喧嘩してるのはきっと彼等には始めての光景だったに違いない
しかし、ごたごたはこれだけでは終わらなかった
真っ黒なインクをぶちまけたような夜更けに、ベノがいきなり俺を叩き起こしてきた。
まだ昨日の事を根に持っているのか?なんて奴だと思っていると、俺に列車のチケットを出すように言ってきた
「なんでそんなものこんなクソ遅い時間に必要なんだよ、チケットのチェックならとっくにおわってるだろ?なんか俺に恨みでもあんのかベノ?」 「俺のベットの前にいるインド人を見ろ。あいつが自分の席だって言い張るから今揉めてんだよ、それでチケットが必要なんだ」
確かにベノのベッドの前には恰幅のいいインド人が携帯電話で誰かと話しながら立ちはだかっている
素直にチケットを出してベノに渡すと、ベノはチケットを持って自分の席に戻って、電話で話しているインド人に強い口調で主張を始めた
「これが俺のチケットだ。よくみろ!!次はお前の番だ!!お前言ったよな?チケット持ってるって!見せてみろよ」 インド人「あー悪かった 俺の勘違いだ ここはお前の席でOKだ」
ベノ「良くない!!お前チケットもってるって言っただろう?見せてみろよ。こんな時間に人たたき起こして間違いでしたで済むと思ってるのか?とに角お前のチケットを み・せ・ろ」ベノにしては珍しく熱くなっている(ベノは見かけによらず平和主義者です)
インド人はたじたじで「悪かったって言ってるだろう?」ベノ「意味わかんないね!!いいからチケット出せよ」と攻めまくるベノをポールも目を覚ましたのか心配そうに眺めていた
インド人はベノの攻撃にずるずると後ずさりして、逃げるように携帯電話で話しながらどっかに消えてしまった
その後も怒りが治まらないのか、一人でぶつぶつと怒りを独り言に載せて、ラップのようにつぶやいていた
さ・ら・に その数時間後の朝、今度は俺の下で寝ていたこれまた恰幅のいいインド人に叩き起こされた
奴の主張は今すぐ起きて上の空いてるベットに移れというものだった
インド列車のボックス席は、ベッドが3段になっていて、普段は2段目のベッドは畳まれている。そうしないと一番下の席に座ることができないからだ。だから彼は起きて座りたかったから、寝ている俺を起こして上に移れと言ってきたのだ
朝はだれだって機嫌が悪い。例外なく俺も昨日の事も手伝って格別にこの日の朝は機嫌が悪かった
そのインド人に対して俺は一言「い・や・だ」と、言って寝返りをうってそっぽを向き、もうこれ以上お前と話す気はないと言う態度を示した
するとそのインド人は、そんなのおかまいなしに、ぎゃーぎゃーわめき始めた。さも自分の主張が当たり前かのように。頼み方を知っていれば俺も嫌々ながら上のベッドに移ったのに、こいつの態度はいただけない
しつこいので俺は無言で思いっきり上のベッドを蹴っ飛ばした。すると騒いでいたインド人は急に大人しくなり、風船がしぼんでいくように自分の席に戻っていった。でかいのは体だけで気はちっちゃいのがインド人の特徴。それを良く知っている俺は場を簡単におさめる方法を知っていた
しかし、自分が馬鹿だった事にすぐ気がつかされた。ベッドを蹴った衝撃で親指のつめが中ほどまで割れて、血が滲み出ていた。昨日ドン引きしていた白人ツーリストはまたかと言った顔で今度は呆れ顔
電車を降りるとき俺はポールに「もう二度とこの3人で電車に乗りたくない」とい言った「そんな事言うなよ、俺は楽しかったぜ」 俺「お前だけな!!」
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