右足と右腕全体のタトゥーに鼻と唇にピアス、両耳には特大のボディーピアスとハードコアなルックスのベノはぐったりとしながらも愛想よく自己紹介してくれた
話してすぐ分かったが、ドイツ人にしては珍しく英語が下手くそだ。実はベノも俺たちの英語の旅に混じりたくてバラナシから3日間かけて遙々やってきたのだ。そんなわけで俺の前でのドイツ語は例えポールと話すときでさえ禁じられた。禁止したのは俺ではなくポールだけど
ベノが来た時点で俺たちは既にここに来て一週間以上が経過していた。ハンピでは特別なアクティビティーやツアーなどは用意されてないけど、探せばやる事はいくらでもみつかる
釣道具を借りて釣をする、ボートを借りて一日中川をのんびり下る、村一番の丘に登って絶景を眺めながら乾杯をする、川向こうのがけでロッククライミングをする、湖に夕陽を見に行く、バイクを借りてツーリング。。。2人でいろいろと提案しあったけど、結局それらが実現する事はなかった。俺たちはあまりに怠け者過ぎたのだ
大体朝起きると2人で朝食を近くのレストランに食べに行く。朝食と言っても時間が遅いので昼兼用で帰ってくると俺はシエスタ、ポールはその間PCの楽曲作成ソフトでテクノを作って遊んでいる。俺がどっか行けば付いて来るが、自分からどっかに行くことはほとんどない。次の日やる事を決めておいても次の日になると気が変わってしまっている。それに対してポールも文句を言わないのでだらだらとベッドの上で一日を過ごす日が増えていってしまう
そしてそれはベノが来たからといってこの怠慢な日常が変わることはなかった
大晦日も新年も特別な事は何もしていない。せいぜい大晦日に隣町にビールを買いに行って、こっそりハンピに持ち帰って皆で乾杯したくらいだ。ちなみにハンピの村に酒を持ち込んだのが警察に見つかると10000ルピーの罰金らしい。日本円で17000円くらい
そして酔って寝て、そのまま年を越した。
ベルリン出身のベノいわくベルリンの新年は狂っているらしい。そこら変で爆竹を投げまくってる奴がいるかと思えば、殴り合いが始まったり。特に理由はないが人を殴る奴がいるのだ。そしてそんな騒然とした中そこら変で薬中が倒れてて、一般人たちが大騒ぎする。そんなドイツの年越しが嫌いらしい。ベノにはお似合いだと思うんだけどね
それに比べるとここは静かで誰もカウントダウンもしなかったらしい。ちなみに村の人口は殆どが観光客で、その90%以上が白人。それでも次の年へと静かにカレンダーはめくられていった
新年もこっそりと持ち込んだビールで昼から乾杯
ベノはこんなルックスでもナースらしく、数ヶ月の休みをとってインド、そしてこのあと日本を旅するらしい。日本人の感覚からしたら、全身刺青とピアスだらけのナースが数ヶ月の休みをとってインドを旅してるって、ドラマの設定だったとしてもありえなすぎて笑ってしまう
ドイツのナースは皆そんないかれた格好してるのかベノに聞いたら、自分は特別だと言った。実際こんな奴はいないし、患者にも同じナースにも変な目で見られると。それでも普通に働けるドイツの寛容さが羨ましかった
ポールは現在19歳で丁度高校と大学の間に休憩を入れて、音楽制作に精をだしたり、旅をしたりしてんだとか。どういうことかと言うと、ドイツは日本と違って高校卒業してもすぐに進学するという文化がなく、皆その間の1~2年間は自分の好きな事に時間を使うらしい。
そしてドイツは殆どの学校が学費免除になるので、みんな高校を卒業すると家を出て働きながら学校に行って、自分で生計を立てることを学ぶ。だからポールが最初19だと知ったときは驚いたけど、若い頃から一人で生きることを学ぶ欧米文化だと心が大人になるのも早いのかもしれない。ポールと話していても、とても10以上も年下と話しているとはおもえないもんな
学費の高い日本では、学生の頃から親の援助無しに生計を立てながら自分のお金で学校に行くっていう事は、並みの努力では難しい。だから日本人の学生が他の外国人に比べると心が未熟なのもしょうがないのかも知れない。そういう場面に直面すると辟易してまうのは否めないけど・・・
新年2日目、ようやく俺たちの計画のひとつが実現した。村の郊外にトレッキングに行く
このぐーたらな空気を振り払うには誰かが引っ張っていかないとと思い、前日俺が提案して全員にアラームをかけて寝るように支持した
結果として俺一人が完全に寝坊をしてやる気をなくしていたのだが、他の二人が珍しくやる気を見せ、見事朝の10時にトレッキングに出発できたのだ
トレッキングと言っても、特にトレイルがあるわけでもなく、村から遠くの方に見える岩山を川に沿って目指すという事でとりあえず話はまとまった
しかし、話はそんなに簡単でもなく、遠くから見ると通れそうなところも、近くに来ると思いの他岩がでか過ぎて越えられないとか、川が部分的に氾濫していて渡れないとか、進んでは戻って回り道探しての繰り返しだった
一応水浴びができる所に行くっていう目的はあったものの、ぼんやりとしたもので目的地が無いのも同然。進めないら帰ればいいと考えてはいたものの、すぐ引き返すのもあっけなさ過ぎるので、どんどん目印の川から離れた所に迷い込んでいった
途中機嫌悪そうな牛が居座って、怖くて追い越せずにぼーぜんと佇むベノ
ポール「ベノ!こっちが何もしなければ大丈夫だから早くこっち来いよ!!」「でも相手は動物、何が起こるかわからないだろう!!少なくとも言葉は通じないんだから」
俺「少なくともドイツ語は通じないだろうな!!あははは ビビッて無いで早く来いよ」
完全にビビッてしまったベノ。牛も呆れ顔で見ています
ようやく水浴び場についてご満悦の2人
俺は水が汚かったのでパス
その後ガイドを連れて滝を目指している白人ツーリストがいたので、こっそりと後をつけるも、途中で見失い滝までたどり着けず
なんだかんだで半日以上歩いたので満足して帰って来た
次の日は一度いったところだけど、ベノがまだいってなかったし、そこから見る夕陽は格別だと聞いたので、再び村一番の丘に登った
夕陽をハートで囲んで写真を撮ろうとするベノ
センスの悪すぎるクレイジージャーマン
この丘で夕陽を待ってる瞬間が旅のハイライトだった
二度と戻ることのできない時間を異国の地で異国の仲間と共有する
探求とはまず開放から始る
さぁ!そろそろハンピを出ようかな
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