飛行機のタラップへ足を乗せると南国特有の重苦しい空気が体中に絡みつく。温度はコルカタよりちょっと高いくらいだが、湿度が全然違う。慣れるまで息苦しさすら感じたが、飛行機を降りた瞬間のこの感覚はどこか懐かしさもあった
きっとこういう感覚を始めて味わったのは、ニュージーランドからフィリピンに飛んだ時だったかもしれない
初めての途上国の一人旅。不安と好奇心が複雑に絡み合い、ドリップコフィーにミルクを入れたみたいに、かき混ぜてもすぐには混ざらず、黒と白の渦を作ってゆっくりと混ざっていく
この重苦しい湿度はその時の感覚をふっと蘇らせてくれる。あの不安と好奇心の不思議なドリップコーフィーを。初めての土地のこういう感覚は嫌いではない
空港のイミグレカウンターでは入島に必要な許可証を簡単に発行してくれる。荷物をピックアップして外に出るとすぐにタクシーの客引きがやってくる
ボートベリアの中心地まで約5キロ。
前日は結局寝れず、空港のベンチに寝転がりながら、コルカタ空港の天井に書かれたインドの文字を眺めながら朝を迎えた。体調もまだ悪かった。普段なら歩くところだが、今回は客引きのいいなりになって目的のゲストハウスまで連れて行ってもらった
アミナゲストハウス。ロンリープラネットに載っている安宿だ。
チェックインしたらビールを買って、抗生物質を飲んで、アラームを昼の14時にセットしてコルカタ滞在時同様そのままベッドに倒れこんだ
目覚ましを14時にセットしたのはフェリーのチケット予約センターが14時から2時間だけやっているからだ。俺は既にコルカタからアンダマンへの往復チケットを予め取っていたので、2週間しか滞在期間が無かった。だから今回は一日たりとも無駄にしないぞと言う意気込みできたのだ
アラームが鳴り目を覚ますと、服を着替えて金と地図を持って外に出た。外はどんよりとしており空は紫色に染まって今にも雨が降り出しそうな雰囲気だった
そんな空を眺めてると急に道を調べてチケットを買いに行くのが面倒になり、気がついたら右手にはチケットの変わりによく冷えたビールが握り締められており、俺は部屋に戻っていた
椅子にゆっくりと腰を落としビールを飲んでいると、外からドラムを叩く様な雨がトタンの屋根を激しく打つ音が聴こえて来た。雷つきのスコールだ。俺はチケットを買いに行かなくて良かったんだと自分に言い訳をして、再び午後の分の薬とビールを飲んで眠りに付いた
翌日の朝目が覚めた。頭はすっきりしており体も軽い、体調はすこぶる良かった。しかし、なにか変だ・・・痒い
腕を良く見ると虫に刺されたような後があり、それが痒い。最初は蚊か何かと思って気にもしてなかったんだけど、よく見ると体中に刺された後がある
それは特にかゆみもなく腫れてもいないし、一見して既に治り掛けてるように見えなくも無かったのでさして気にもしなかった。痒いのは先ほどの腕の一箇所だけ
しかしである、数時間後急に手の甲やその周辺が痒くなり始め、よく見ると先ほどまで治りかけていたと思った虫刺され後が真っ赤に腫れあがっていたのだ
それも凄まじい痒さで本能の赴くままにぼりぼりと掻いていたらいつの間にか虫刺され後は数倍の大きさにまで成長していた。これ以上掻くのもまずいと思った俺はとりあえず日本製のムヒをそこに塗りたくって痒みを抑える事に奮闘した
ようやくムヒで左手周辺の痒みがなくなったと思ったら今度は右腕、同じようにムヒで痒みを抑えていると数十分後には右手、今度は足、次は首と次々と刺され後が復活して腫れあがり、痒みが襲ってくる
一度復活した刺され後も2時間もすると元の色の無い状態に戻り、痒みもムヒ無しに引いてくのだが、数時間後にまた腫れだして痒みとの戦いが始めるのだ。そして体中の各パーツが時間差を置いて腫れ始めるので、一日中からだの何処かが痒くてかゆくてたまらない
恐らく刺されたときに、時間差を置いてやられたから、体の部位によって痒くなる時間差があるのだ。その上痒みも引いたり急に出たりなので、まるでモグラたたきをしているようだった
しかもこの痒みはこの日以来2週間続くのであった
虫刺され後には特徴があって、無秩序に海の岩に大量にくっついたフジツボのように見えなくもないが、よく見るとばらばらに刺された後でも一つのラインをかたどっているのだ。その上全て寝ている間にやられている
そしてこの特徴は主にアジアで猛威を振るっている南京虫に他ならない
噂はよく耳にしていたが、喰われたのは始めての経験。ここまで厄介な奴だとは思わなかった
早速宿のオーナーに報告するも一向に認めようとしない。別に責任を取れと言ってるわけでもないのに、それは蚊だとかなにかのアレルギーだとかぬかすし、今まで一度も南京虫なんて出たこと無いとか言って認める様子がない。そのくせ、部屋には後で南京虫用の殺虫スプレーを撒き散らしに来る。一回も出たこと無いのになんでそんな物を持っているのだろうか??
俺はささやかな復讐のため、これから先アンダマンやアンダマンに行くというツーリスト全てに「Amin guest house」で南京虫にボコボコにされたと言って周った。ちなみに英語では「bedbug」です
無事その日の午前中にhavelock島行きのチケットを手に入れた。
アンダマン島は玄関口となっているポートベリアから各諸島に向うフェリーが運航している。そしてほとんどのツーリストがhavelock島目当てで来るので、中にはポートベリアを素通りしてしまうツーリストも少なくない。俺もその予定だったんだけど、体調不良といつもの怠けが手伝って2泊もして時間を無駄にした挙句、南京虫にボコボコにされるという踏んだりけったりの目にあった
でも、痒いのをのぞけば体調はすっかり回復し、先行きは明るいものとなって来た
俺がこの島に来た主な目的はダイビングだったので、もしこのまま体調が悪いままだったらダイビング所ではなかった。下手したら南京虫の巣窟に何泊もしないといけない羽目になっていたかも知れない
きっとこういう感覚を始めて味わったのは、ニュージーランドからフィリピンに飛んだ時だったかもしれない
初めての途上国の一人旅。不安と好奇心が複雑に絡み合い、ドリップコフィーにミルクを入れたみたいに、かき混ぜてもすぐには混ざらず、黒と白の渦を作ってゆっくりと混ざっていく
この重苦しい湿度はその時の感覚をふっと蘇らせてくれる。あの不安と好奇心の不思議なドリップコーフィーを。初めての土地のこういう感覚は嫌いではない
空港のイミグレカウンターでは入島に必要な許可証を簡単に発行してくれる。荷物をピックアップして外に出るとすぐにタクシーの客引きがやってくる
ボートベリアの中心地まで約5キロ。
前日は結局寝れず、空港のベンチに寝転がりながら、コルカタ空港の天井に書かれたインドの文字を眺めながら朝を迎えた。体調もまだ悪かった。普段なら歩くところだが、今回は客引きのいいなりになって目的のゲストハウスまで連れて行ってもらった
アミナゲストハウス。ロンリープラネットに載っている安宿だ。
チェックインしたらビールを買って、抗生物質を飲んで、アラームを昼の14時にセットしてコルカタ滞在時同様そのままベッドに倒れこんだ
目覚ましを14時にセットしたのはフェリーのチケット予約センターが14時から2時間だけやっているからだ。俺は既にコルカタからアンダマンへの往復チケットを予め取っていたので、2週間しか滞在期間が無かった。だから今回は一日たりとも無駄にしないぞと言う意気込みできたのだ
アラームが鳴り目を覚ますと、服を着替えて金と地図を持って外に出た。外はどんよりとしており空は紫色に染まって今にも雨が降り出しそうな雰囲気だった
そんな空を眺めてると急に道を調べてチケットを買いに行くのが面倒になり、気がついたら右手にはチケットの変わりによく冷えたビールが握り締められており、俺は部屋に戻っていた
椅子にゆっくりと腰を落としビールを飲んでいると、外からドラムを叩く様な雨がトタンの屋根を激しく打つ音が聴こえて来た。雷つきのスコールだ。俺はチケットを買いに行かなくて良かったんだと自分に言い訳をして、再び午後の分の薬とビールを飲んで眠りに付いた
翌日の朝目が覚めた。頭はすっきりしており体も軽い、体調はすこぶる良かった。しかし、なにか変だ・・・痒い
腕を良く見ると虫に刺されたような後があり、それが痒い。最初は蚊か何かと思って気にもしてなかったんだけど、よく見ると体中に刺された後がある
それは特にかゆみもなく腫れてもいないし、一見して既に治り掛けてるように見えなくも無かったのでさして気にもしなかった。痒いのは先ほどの腕の一箇所だけ
しかしである、数時間後急に手の甲やその周辺が痒くなり始め、よく見ると先ほどまで治りかけていたと思った虫刺され後が真っ赤に腫れあがっていたのだ
それも凄まじい痒さで本能の赴くままにぼりぼりと掻いていたらいつの間にか虫刺され後は数倍の大きさにまで成長していた。これ以上掻くのもまずいと思った俺はとりあえず日本製のムヒをそこに塗りたくって痒みを抑える事に奮闘した
ようやくムヒで左手周辺の痒みがなくなったと思ったら今度は右腕、同じようにムヒで痒みを抑えていると数十分後には右手、今度は足、次は首と次々と刺され後が復活して腫れあがり、痒みが襲ってくる
一度復活した刺され後も2時間もすると元の色の無い状態に戻り、痒みもムヒ無しに引いてくのだが、数時間後にまた腫れだして痒みとの戦いが始めるのだ。そして体中の各パーツが時間差を置いて腫れ始めるので、一日中からだの何処かが痒くてかゆくてたまらない
恐らく刺されたときに、時間差を置いてやられたから、体の部位によって痒くなる時間差があるのだ。その上痒みも引いたり急に出たりなので、まるでモグラたたきをしているようだった
しかもこの痒みはこの日以来2週間続くのであった
虫刺され後には特徴があって、無秩序に海の岩に大量にくっついたフジツボのように見えなくもないが、よく見るとばらばらに刺された後でも一つのラインをかたどっているのだ。その上全て寝ている間にやられている
そしてこの特徴は主にアジアで猛威を振るっている南京虫に他ならない
噂はよく耳にしていたが、喰われたのは始めての経験。ここまで厄介な奴だとは思わなかった
早速宿のオーナーに報告するも一向に認めようとしない。別に責任を取れと言ってるわけでもないのに、それは蚊だとかなにかのアレルギーだとかぬかすし、今まで一度も南京虫なんて出たこと無いとか言って認める様子がない。そのくせ、部屋には後で南京虫用の殺虫スプレーを撒き散らしに来る。一回も出たこと無いのになんでそんな物を持っているのだろうか??
俺はささやかな復讐のため、これから先アンダマンやアンダマンに行くというツーリスト全てに「Amin guest house」で南京虫にボコボコにされたと言って周った。ちなみに英語では「bedbug」です
無事その日の午前中にhavelock島行きのチケットを手に入れた。
アンダマン島は玄関口となっているポートベリアから各諸島に向うフェリーが運航している。そしてほとんどのツーリストがhavelock島目当てで来るので、中にはポートベリアを素通りしてしまうツーリストも少なくない。俺もその予定だったんだけど、体調不良といつもの怠けが手伝って2泊もして時間を無駄にした挙句、南京虫にボコボコにされるという踏んだりけったりの目にあった
でも、痒いのをのぞけば体調はすっかり回復し、先行きは明るいものとなって来た
俺がこの島に来た主な目的はダイビングだったので、もしこのまま体調が悪いままだったらダイビング所ではなかった。下手したら南京虫の巣窟に何泊もしないといけない羽目になっていたかも知れない